クリス・ジェリコとスタジアム・スタンピード2とふたりの後継者
日本時間5/31の朝、おそらくAEW年間最大PPV(ということになってるはず)のDouble or Nothing 2021が放送された。
が、私はその日は目覚めが早かった割に体調がめちゃくそに悪く、AEW世界王座戦を前に視聴を撤退しダウンするしかなかった。(ネットでは今まで話してこなかったが、実は私は諸事情があり長期自宅療養中の身である。毎週朝っぱらからプロレスが見れるのはそんな理由があるのだ)
いちおう夕方にはある程度復調したので、王座戦をすっ飛ばして(スマン🍊さん&パック…結局オメガが勝ったのは知ってる)今回の目玉試合(試合?)スタジアム・スタンピード2を見ることにした。
去年のDoNはまだ買っていないのだけど、どうも馬が走ったり客席でどつきあいしたりゴールポストでバク転したりしていたらしいので今回もそういうのなんだろうな、と思っていたらほぼバックヤード・デスマッチだった。まあ面白かったからいいんだけど。
で、今回のスタジアム・スタンピード2、オチを予測できたAEWオタクはどのぐらいいるだろうか?大半の視聴者は『ジェリコとMJFの決着』を期待していたはずだ。
実際にこの試合でスターになったのはジェリコでもMJFでもなく、サミー・ゲバラだった。
私はBLOOD&GUTSとスタジアム・スタンピード2は『クリス・ジェリコのふたりの後継者の話』なのだろうと思っている。
これはMJFがインディー時代にこさえた嘘ドキュメンタリー。ようやるわ
まずMJF。大学中退という挫折を経験した彼は、プロレスラーという進路を定めた初期から目標を明確にし、実父との約束である「姉さん2人と同じ4年の時間で絶対に成功してみせる」を見事に果たし、当時22歳という若さでAEWとの5年契約を交わした。
その後の快進撃は語るまでもなく、今やAEWにいなくてはならない大スターへと成長し、先日のBLOOD&GUTSで見せた血塗れの雄叫びで完全に覚醒したといってもいいだろう。ヘッポコヒールからクール・ヒールまで完璧にこなせるAEWの一大ヒール・スターだ。
一方のサミー・ゲバラは高卒してすぐブッカーTの道場に入り、もうプロレス歴10年になろうというのに
過去の失言がバレて謹慎になったり
大先輩マット・ハーディーをガチで2度殺しかけたりLIVE on #AEWDynamite this Wednesday, from Daily’s Place in Jacksonville..
— MATT HARDY (@MATTHARDYBRAND) 2020年9月8日
I SPEAK. pic.twitter.com/E52ewNaeAd
FULL GEARで完膚なきまでにマット一家にボコボコにされた挙げ句山に捨てられたり"THE COMPETITION’S IN THE MUD, I LOVE TO SEE IT!" #EliteDELETION pic.twitter.com/moDWlw878B
— MATT HARDY (@MATTHARDYBRAND) 2020年11月9日
…したあとは個人YouTubeチャンネルの定期配信や、いちキャストとして番組内での出番はあったものの、過去のヤラカシが原因か肝心の試合回数は激減。気がついたらMJFの裏切りアングルのせいでショーン・スピアーズのパイプ椅子攻撃を喰らい歯が1本吹っ飛んでいた有様であった。
サミー・ゲバラは誰が見ても「ネット炎上ばっかのポンコツアホレスラー」だった。
MJFとゲバラ、あまりに対照的な二人に共通するもの、それは『クリス・ジェリコの後を継ぐもの』であるということだ。
推しレスラーをロディ・パイパーだと公言しているMJFだが、実はジェリコのこともめちゃくちゃ好きである。
半年かけてのWCW4バカ再現からの(ジェリコの青春の一角である)マレンコ先生誘拐とかMJFのジェリコ愛が重すぎるんだよ pic.twitter.com/yaHQFzVAT0
— W-asi (@pilotworks) 2021年5月29日
約半年をかけてのWCW4バカ(私が勝手にこう呼んでいる、クリス・ジェリコ、エディ・ゲレロ、クリス・ベノワ、ディーン・マレンコのWCW時代の親友4人組)完全再現、しかもPPV前週のDynamiteでは(パーキンソン病持ちの)マレンコを人質にジェリコを煽る高等テクニックまで披露した。おまえどんだけジェリコが好きなんだ?ジェリコがWCWにいた頃おまえまだ赤ちゃんやぞバブゥラブレターじゃねえかよ(1つ元ネタ抜けてるけど察してね) pic.twitter.com/WFafzwTpFO
— W-asi (@pilotworks) 2021年5月29日
以上により、MJFは『自ら意識してWCW時代のジェリコの再現を試みている』気配があり、『クリス・ジェリコを継ぐオールマイティー型ヒール・スター』になろうとしている人物である。
サミー・ゲバラは『クリス・ジェリコの心理面においてのクローン』である。
おそらくゲバラはそのことについて無自覚であろうし、ジェリコもそのことに気づいているかはまだわからない。(何せゲバラをインナーサークルに入れた理由が「こいつはバカで面白いから」である。ほぼおまえのコピーだよ)
メキシコやアメリカ、日本で転戦を重ね、ようやく新興メジャーのAEWと契約したのに、ヘマばかりでなかなか先に進めないゲバラの姿。それは世界中でキャリアを積み鳴り物入りでWWFへ移籍したのに、失敗続きでバクステで問題ばかり起こしていたジェリコとそっくりである。(そのへんの経緯はTogetterにまとめていますのでご一読ください。ついでにジェリコの自伝買ってあげてね)
スターとしての資質を持ちながら、なかなか成功を掴めずしょぼくれるジェリコに自信をつけさせるため、ビンス・マクマホンが取った手段は「無理矢理にでもベルト(WWF&WCW統一王座)を持たせてチャンピオンとしてのプライドを身につけさせる」ことだった。
スタジアム・スタンピード2で本来の身体の柔軟性を活かしたアクロバティックなパフォーマンスを見せ、最後にスピアーズに見事な450°スプラッシュを極めて3カウントを取ったゲバラにも同じことが言える。AEWは彼に自信をつけさせるためにメインマッチのフィナーレを飾らせたのだ。大観衆の歓声を浴びた今、ようやく彼はスターとしてのスタートラインに立てたといえるだろう。
The bubbly will be flowing tonight! 🍾 #InnerCircle#AEWDoN pic.twitter.com/GOXCjhfXnK
— All Elite Wrestling (@AEW) 2021年5月31日
BLOOD&GUTSとスタジアム・スタンピード2で、クリス・ジェリコは自身のふたりの後継者をスターに仕立てる離れ業をやってのけた。これは直系の弟子のいないジェリコにとっては感慨深い2戦であったはずだ。
試合後のインナーサークルの面々がめちゃくちゃ喜んでてジェリコも超ニコニコ!トンネルでスタント&フエゴと抱き合うシーンにもホロリ…まあその前のスタント君メシ捨てイタズラはどうかと思うが
そして私は願っているのだ。いつかこのクリス・ジェリコのふたりの後継者が、リングで王座をかけて戦う瞬間を。そう遠くない日に見られると信じて。